個人事業主で建設業を営んでいて、「そろそろ法人化(法人成り)したい」「法人化(法人成り)して建設業許可を取りたい」
とかんがえて、法人化(法人成り)する場面があると思います。
法人を設立する際は、様々な書類の準備や手続きが必要になります。
そこで今回は、建設業における法人化(法人成り)の際に建設業の専門家として考えるべきことをまとめさせて頂きました。
個人事業主から法人化(法人成り)される建設業者さまは是非ご参考ください。
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1 資本金の額
現在、法人の設立にあっては資本金の額の最低金額の規定はございません。つまり、資本金1円から設立が可能です。
そもそも、法人を設立をするとなると誰でも閲覧が可能な登記簿謄本というもので会社情報が閲覧可能になります。
会社の公式なプロフィールのようなもので、そのプロフィールに「資本金の額」の記載がなされます。
誰でも閲覧可能なこの登記簿謄本に記載される情報は言い換えると会社の信用ともいえる重要な項目です。
ではこの資本金の額、いくらが望ましいのかというと、理想は「500万円」です。
この500万円というのは、建設業許可の取得要件の財産要件と同様です。
建設業法の主旨として、発注者の保護という観点からこの500万円以上の資金調達能力が求められます。
つまり、建設業者として対外的にも資金調達能力を示すことができるということです。
この500万円という金額はあくまで理想ですが、法人設立時の資本金の額に最低金額が設けられていないとしても少額すぎる金額での資本金は避けることが賢明です。
ちなみに、この資本金ですが決算書上は「純資産」として計上されます。
設立時の決算書類に「純資産」の額が500万円以上あれば設立と同時に建設業許可を取得をお考えの場合は、準備する書類も少なくて済む場合もございます。
2 事業の目的登記
しばらく個人事業として建設業を営んできた方であれば特に問題は生じませんが、
登記簿謄本にはその会社の「事業の目的」を示す項目もございます。
これは、この会社は「○○事業を本業として営んでいます。」と対外的に示す役割がございます。
建設業許可を取得する際に、登記簿謄本の提出があるのですが、この「事業の目的」欄に建設業を営んでいる目的が無いと先述の息子への代替わりの際につまづいてしまいます。
「建設業での経営経験が5年以上」というものは、登記簿謄本上の役員登記欄のみではなく、会社の事業の目的も確認されます。
つまり、Aさんは、建設業を目的とした会社の役員として5年間経営経験があるという証明が可能です。
建設業としての目的記載ですが、ここでも注意が必要です。
例えば足場工事をメインで行うとび土工工事業者の場合は、「とび・土工工事業の請負・施工」など具体的に記載しましょう。
重要なのは、「どんな工事」を「請負い」「施工」するというような具体的記載があることです。
もちろん、「とび・土工工事業」のみでも良い場合もございますが、せっかくの設立時ですので確実な記載を心がけましょう。
他にも、許可が必要な建設業以外の産業廃棄物処理業や、宅建業、建築士事務所など付随した業務がある場合は、
この「事業の目的」は重要となります。設立時には一度行政書士にご相談ください。
3 役員登記
現在、中小企業であれば役員の登記は1名から可能です。しかし、設立時の役員は社長だけでよいのでしょうか。
ここでいう役員というのは、取締役のことを指します。
よくあるケースとして、個人事業主の時代に、自身の息子を従業員として共に事業をしてきた場合です。
この場合は、おそらく後継者として息子をいずれ社長として代替わりをしていくことをお考えではないでしょうか?
こういった場合ですが、ずばり、息子さんも取締役として就任させ会社経営者としてスタートすることをお勧めします。
もちろん、経営に一切携わらない名ばかりの取締役就任はいけません。
建設業許可を取得する大きな壁に、例外はありますが「建設業での経営経験が5年以上」必要とします。
この確認方法として、法人の場合はもれなく会社の「登記簿謄本」の確認がなされます。
もし、急に社長の体調がすぐれなくなり、社長としての役割がしっかりと果たせなくなってしまった場合、
あわてて息子様を社長として役員の入れ替えしたとしても、建設業許可の要件「建設業での経営経験が5年以上」が認められず建設業許可を維持できなくなってしまいます。
理想は、建設業許可上、いつでも代替わりができる状況を用意しておく必要があります。
このように後継者をお考えの場合は、設立時の取締役は慎重にお考え下さい。
4 決算日の設定
個人事業主の毎年の決算の区切りは、毎年1月1日から12月31日となりますが、法人の場合は何月何日でも自由に設定できます。
この決算日は、先述の登記簿謄本には記載されない情報です。
では、この決算日ですが、いつが良いという明確な答えはありません。
考えるべきことは、将来的に公共工事に参入していくという場合に役立つかもしれません。
公共工事に参入していく場合は、経営事項審査(経審)というものを受けて建設業者としての点数にて評価を受ける必要があります。
その際の評価項目に、決算内容が含まれています。評価対象となるものは、決算日時点での会社の経営状況です。
個人事業主から法人化(法人成り)する場合は、おそらく取引先は大きく変わらないと思います。
つまり、個人事業主としての決算内容を踏まえた決算日の設定をお勧めします。
毎月の取引状況を数年分確認してみてください。「総資本額」が毎年少ない傾向にある月はございませんでしょうか。
基本的には総資本額が少ないと、効率よく売上や利益が出ていると判断されます。
「4月は、受注が少なく、必然と現金も減少傾向。」一方、「8月は比較的入金時期が重なり現金増加傾向。」
「3月は毎年、売掛金や買掛金が重なっている。」
などの傾向はございませんでしょうか?もしわからなければ顧問先の税理士の先生にご相談してみてください。
経営事項審査(経審)の評価基準としては「決算日」です。
つまり、わざわざ決算書の見栄えが良くない月を選定する必要はございません。
一度、自社の会計上の傾向を確認した上で、決算日の設定をされることをお勧めします。
もし、特段どの月も目立った差が無いのであれば6月~8月の決算月をお勧めします。
詳しくは今回は割愛させていただきますが、これは公共工事参入のための入札に関するためです。
5 建設業許可を取得している場合
個人事業主から法人化(法人成り)をする場合にすでに個人事業主として建設業許可を取得している場合もございます。
その場合、建設業許可の事業承継手続きが可能です。
この事業承継を行う場合は本来、建設業許可の新規申請時に必要な県証紙代90,000円が不要となるメリットがございます。
しかし、注意すべき点はこの事業承継手続きですが、事前の申請が必要となります。
つまり、法人化する予定の段階から事前に申請しておく必要があります。
法人化を先立って行ってしまうと事業承継ができなくなり通常の法人として新規申請手続きとなってしまいますのでご注意ください。
事業承継を行うメリットとしては、申請時の費用が抑えられることの他に、建設業の営業年数が引き継がれることです。
営業年数は公共工事の際の加点項目です。営業年数は日数が経たなければ得ることができない貴重なものです。
また、法人化すぐに公共工事に参入する際には個人事業主の時の営業利益も引き継ぐことが可能ですので大きなメリットと言えます。
詳しくは、「建設業許可業者の事業承継(相続)について注意点を解説」もご参照下さい。
まとめ
このように建設業における法人化は、考慮すべき点が多く複雑です。
一般的に、法人の設立となると司法書士の先生にご依頼されると思いますが、時には税理士の先生や、
建設業に精通した行政書士の先生の意見を取り入れることにより最善の策となるのではないでしょうか。
ほとんどの会社は、法人設立後はこれらの情報を変更しません。
設立のタイミングで可能な限り最善な方法で考えてみましょう。
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